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イタリアの有名デザイン会社が手がけた世界で1台のMVアグスタを見られるチャンス

こちらが今回展示されたF4Z。ハンドル下あたり、Zのロゴがあるのだが、これがザガートのロゴ

バイクやクルマのデザインに興味を持っている人ならすでにご存知かもしれないけれど、ザガートというイタリアのデザイン会社が、日本人実業家の依頼を受けて手がけたMV AGUSTAのF4Zという車両が、東京青山のコスチュームナショナル青山旗艦店に7月31日(月)までの期間限定で展示されているのだ。ザガートは、クルマをはじめさまざまな工業製品のデザインにたずさわっていて、アストンマーティン・DB9スパイダーザガート センテニアル、BMW・ザガートクーペ/ロードスターなどが最近の仕事として知られている。

 

今回の展示に合わせて、F4Zのデザイナーである原田則彦さんが来日してオープニングセレモニーが行なわれた。その際、お話をうかがう機会があり、そこで今回初めてたずさわったバイクのデザインについてあれこれ聞いたので、その内容をお伝えしよう。最初に質問したのは、バイクのデザインにクルマとは違ったおもしろさがあったのかだ。

セレモニーで車両の説明をする原田則彦さん。ザガート社で20年以上働いていて、もちろん普段はイタリアで生活している

「仕事はみんな同じですけれども、おもしろいこともあれば大変なこともあります。今回、おもしろいというか、まず元のF4がスーパースポーツでカッコいいわけですよ。かわった格好にすることはできるにしても、デザインを変えるということに意味があるんですね。こういうプロジェクトというのは、オーナーの方のために特別なバイクにしたいわけです。ですから、まず元のアグスタとは一目見て違わないとやっている意味がないんです。もちろんオーナーの方は、けっこうな対価をお支払いになっています。世のなかの人が見て、“あんまりオリジナルと違わないね”と思われることは、プロのデザイナーとして絶対にあってはならないことなんです。違った視点で、デザインは切り口をどんどん変えていかなければいけないということです。なおかつ、オーナーの方が希望していることにお応えするようなことを考える。さらにザガートというデザイン会社が持っているアプローチとかデザインのDNAみたいなものがあります。そういうものをある程度感じられるようなモノでなくてはならない。加えてデザイナーである私自身が“これでいい”と思えるようなモノにならなければいけないんです。ですから正直いって、プレッシャーの方が断然大きかったですね。

 

F4はスーパースポーツなのでボリュームをものすごくしぼってあって、カウルとフレームの間に指一本すら入りません。ですから形を変えていこうとすると、どうしてもふくらんでいくんです。ふくらむとバイクって、あんまりよくないじゃないですか。このように、難しいことが多いんです。

 

新しい仕事は学ぶことが多いですけど、いろいろとデザインしていて、作業のなかで気が付くことがよくありますよ。とくに今回はフロントサスペンションまわりの空間の取り方。クルマでいうとタイヤがフェンダーのなかにピッチリはまっているのがカッコいいのと同じように、フロントフォークのストロークとか、もし詰められればどんどんカッコよくなるわけですよ。ところが量産のアグスタで、すでにフロントのインテークあたりやタイヤのフロントフェンダーと干渉の問題は限界まで詰めてますから、それをさらに詰めるってことはできないわけです。そういうところにバイクのデザイナーって気をつかって限界まで攻めているなってすごくよくわかりました。

 

車両メーカーのデザイナーの方もいろいろな制約があって、やりたくてもできないことがたくさんあると思うんですよ。ウチみたいな独立したデザイン会社が、いろいろな提案をさせていただければなと思うんですよね。少なくともメーカーに比べれば我々は自由があるわけですから。今回もかなり思い切ったことをさせていただいたと思っています。ですから、好き嫌いハッキリ分かれてもいいんです。もともとデザインってそういうもので、万人に好かれてもらおうというデザインが、本当にいいデザインかどうかはわからないという難しい問題があるんです。自分が思っていることを正面からドンっと出していくと、必ず『それいいね』という人と『自分は好きじゃない』という人が出てくるのが普通なんです。

 

バイクが本当に好きで、とくにアグスタを持っていらっしゃる方はアグスタに対するご自身のイメージってすごくあると思うんですよ。そういう方に対して、ああいうまったく別の方向性を持ったバイクを出すことは、ある種ちょっと聖域を犯されたようなところがあるんじゃないかと。ただ、実際に見ていただいて、写真ではこうだったけれど本物はこうなんだってわかっていただきたい。実際に車両を見て、感じてもらうのが一番いいかなと。『本物を見るとけっこう思ったよりよかったね』といってくださるとうれしいですけど。いろんな方に見に来ていただきたいです」

 

もしかしたら、今後世の中にその肢体を現さないかもしれない世界に1台だけの特別なモデルを目の当たりにできるチャンスは今だけ。同時に2016年WSBKで使用されたF4のレーシングモデルF4RCも展示されているので、そのデザインの差を見比べてみるのもいいだろう。

既存のバイクとは一線を画すデザインなのがわかるだろう。車両の左側に立つのは、MV AGUSTA JAPANの石井代表

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